酵素用語辞典
ここでは多様な酵素の働きを
用語辞典として
わかりやすくまとめました。
酵素の成分は自然界に存在する
アミノ酸からできている、
安全で環境にやさしい触媒です。
また、穏やかな温度や圧力で
様々な化学反応の速度をスムーズに上げるため、
省エネルギーといったメリットも。
だからこそ、
持続可能な未来を実現する存在として
世界中から注目を集めているのです。
酵素がどんな課題解決に役立つか、
あれこれ想像しながら
読んでもらえたらうれしいです。
ア行
カ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
A to Z
プロテアーゼ
h
最初に発見されたプロテアーゼは、1783年にイタリアのスパランツァーニ(L.Spallanzani)が発見した、胃液のペプシンとされています。スパランツァーニは自身の胃液を、牛肉にかける実験を行い、胃液の中に蛋白質を分解する酵素があることを見出しました。この酵素は、1825年にドイツのシュワン(T.Schwann)にペプシンと命名され、1907年から本格的に研究が始まったと考えられています。
プロテアーゼは多くの生物に存在し、動物、植物、微生物など多くの生物に広く存在します。動物では食肉を分解する三大消化酵素の一つとして知られています。また、微生物では日本酒の製造で使用される麹菌、納豆の生産に使用される納豆菌がプロテアーゼを産生することが広く知られています。
プロテアーゼの応用例は広く、日本酒や納豆などの発酵食品、アミノ酸エキスなどの調味料、医薬品原体などの工業原料の製造に使用されています。そのほか、食肉の軟化剤としても販売されています。分解が主目的と思われがちですが、逆の用途でも用いられます。たとえば、チーズの製造工程での乳蛋白の凝固もプロテアーゼの作用によるものです。乳中のタンパク質がプロテアーゼにより部分分解され、大きな塊として凝集し乳中で固体となり分離されることでチーズが製造されます。
プロテアーゼの応用例は広く、日本酒や納豆などの発酵食品、アミノ酸エキスなどの調味料、医薬品原体などの工業原料の製造に使用されています。そのほか、食肉の軟化剤としても販売されています。分解が主目的と思われがちですが、逆の用途でも用いられます。たとえば、チーズの製造工程での乳蛋白の凝固もプロテアーゼの作用によるものです。乳中のタンパク質がプロテアーゼにより部分分解され、大きな塊として凝集し乳中で固体となり分離されることでチーズが製造されます。
プロテアーゼは、タンパク質やポリペプチドを加水分解する酵素です。プロテアーゼには、多種のアミノ酸が並んで結合しているタンパク質やポリペプチド内の、特定のアミノ酸の並びを選んで切断するもの(高基質特異型)と、あまり選ばずに切断するもの(低基質特異型)があります。
αグルコシダーゼ
a
1958年に酵母からのαグルコシダーゼがハルヴァーソン(H.Halvorson)らにより報告されています。動物組織における存在はダルキスト(A.Dahlquist)らにより1960年に、昆虫での存在はフーバー(R.E.Huber)らにより1973年に報告されています。
ヒトには少なくとも5種類のαグルコシダーゼが発見されており、消化酵素としての働きが知られています。本酵素は基質の高濃度条件下では糖転移反応を触媒することが知られており、オリゴ糖の工業生産に用いられています。食品においては、米飯をふっくらと炊き上げる効果が報告されており、炊飯改良剤として利用されています。
また医療においては、αグルコシダーゼ阻害剤が実用化されています。二糖類が単糖類に分解されることを阻害し、体内に吸収されることを抑えることで、血糖値の上昇を防ぐ糖尿病治療薬が開発されています。オールスパイス、ナツメグ、セージやタイムなどのスパイスにもαグルコシダーゼの阻害効果があるものが知られています。
また医療においては、αグルコシダーゼ阻害剤が実用化されています。二糖類が単糖類に分解されることを阻害し、体内に吸収されることを抑えることで、血糖値の上昇を防ぐ糖尿病治療薬が開発されています。オールスパイス、ナツメグ、セージやタイムなどのスパイスにもαグルコシダーゼの阻害効果があるものが知られています。
グリコシダーゼは、グルコースを含めた糖全般とのグリコシド結合を分解する酵素の総称であり、グリコシド結合を分解する酵素の個別名です。αグルコシダーゼは糖のα-1,4-グルコシド結合を加水分解する酵素です。ほとんどの生物がこの酵素を持っており、生体内でのエネルギー生産において重要な役割を担っています。麦芽糖(マルトース)もこれによって分解されるため、マルターゼ(maltase)とも呼ばれています。
グルカナーゼ
k
酵素の分類上、グルカナーゼにはアミラーゼやセルラーゼも含まれており、その発見はこれらの酵素の発見(アミラーゼ:1833 年、セルラーゼ:1911年)に遡ります。
βグルカンは、細菌、真菌、酵母、オート麦、大麦といった穀物の細胞壁を構成する天然成分として広く知られています。βグルカンを分解するβグルカナーゼは糸状菌や酵母、細菌の細胞壁成分を溶解することから、植物の疾病における予防や治療への応用が期待されています。工業利用では酵母エキス製造やビール製造工程の濾過効率の向上への使用、飼料消化促進剤としての使用が知られています。
グルカナーゼは、グルコースで構成される多糖であるグルカンを加水分解し、グルコオリゴ糖またはグルコースを生成する酵素の総称です。グルカンにはαグルカンとβグルカンに分類されます。代表的なαグルカンのプルランを分解するのがプルラナーゼと呼ばれるグルカナーゼです。
アミラーゼ
a
1833 年に、フランスの化学者ペイアン(A. Payen)とペルソ(J. Persoz)は麦芽からデンプンを分解する成分としてアミラーゼを初めて抽出し、ジアスターゼと命名しました。これが酵素の初めての単離です。この酵素がアミラーゼと命名されたのは1898 年に酵素命名のルールが提案されてからです。1894年には 高峰譲吉が麹菌由来のアミラーゼの製造法として小麦ふすま麹法を開発し、消化酵素剤タカジアスターゼを発明しました。
アミラーゼはデンプン糖化、食品加工、 醸造用、工業用の糊抜剤や消化剤の医薬原体など、様々な目的に利用されています。
日本酒の醸造にはアミラーゼの生産性が高い麹菌を「もやし」と呼ばれる種麹として使います。「もやし」は、木灰がまぶされた蒸米の上で麹菌を繁殖させて得た胞子を乾燥させたものです。 日本には種麹を専門に扱う業者が平安時代(794~1185年)には存在したとされています。
日本酒の醸造にはアミラーゼの生産性が高い麹菌を「もやし」と呼ばれる種麹として使います。「もやし」は、木灰がまぶされた蒸米の上で麹菌を繁殖させて得た胞子を乾燥させたものです。 日本には種麹を専門に扱う業者が平安時代(794~1185年)には存在したとされています。
アミラーゼはデンプン(糖質)を分解して糖にする酵素です。動物、植物、微生物に広く存在しており、人では主に膵臓、睡液腺、耳下腺から分泌されます。アミラーゼは作用様式により、エンド型アミラーゼとエキソ型アミラーゼに分類されます。デンプンはブドウ糖が鎖状に連なった構造をしていますが、エンド型アミラーゼは鎖の内部を切断、エキソ型アミラーゼは鎖の末端を切断するものです。人の消化では両者のアミラーゼが連携することによりデンプンが効率的に分解されエネルギーとなります。
リパーゼ
r
リパーゼは生理学の研究から見出されました。1844年、 フランスの生理学者ベルナール(C.Bernard)は、膵液に脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する作用があることを発見し、リパーゼの存在を示唆しました。その後、1896年に フランスの生理学者ハンリオット(M. Hanriot)が血液中でモノブチリンという物質を分解するものを特定し、リパーゼと名付けました。
リパーゼはグリセロールの脂肪酸エステルを分解するだけでなく、逆反応として脂肪酸エステルの合成・交換反応も行ないます。この逆反応は、油脂の改質工程や工業原料の製造に用いられます。この場合、有機溶媒中で反応することもあり、有機溶媒への耐性が要求されることがあります。その他の利用用途として消化薬、洗剤への添加も知られています。
血液中のリパーゼは病気の診断の指標にもなります。急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢胞等の膵疾患患者では血中のリパーゼ濃度が上昇します。特に急性膵炎は、発見が遅れると命にかかわるため、急性膵炎の診断には血中リパーゼの測定が欠かせません。
血液中のリパーゼは病気の診断の指標にもなります。急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢胞等の膵疾患患者では血中のリパーゼ濃度が上昇します。特に急性膵炎は、発見が遅れると命にかかわるため、急性膵炎の診断には血中リパーゼの測定が欠かせません。
リパーゼ は、脂質を加水分解する酵素です。特にトリグリセリド(グリセロールの脂肪酸エステル)を分解し脂肪酸を遊離するトリアシルグリセリドリパーゼを指します。トリグリセリドは食用油脂として食生活に密接しており、リパーゼは消化液(膵液)に含まれる脂質の消化を行う消化酵素として知られており、多くの種類の生物の細胞で脂質の分解を行います。
リパーゼの語源は、ギリシャ語の脂肪を意味する“lipos”に、最初に発見された酵素ジアスターゼ(Diastase)に由来する“ase”を組み合わせたものです。
リパーゼの語源は、ギリシャ語の脂肪を意味する“lipos”に、最初に発見された酵素ジアスターゼ(Diastase)に由来する“ase”を組み合わせたものです。
D-アミノアシラーゼ
t
1978年に、放線菌Streptomyces olivaceusからのD-アミノアシラーゼが報告されています。その後、Pseudomonas、Alcaligenes 属由来からのD-アミノアシラーゼの研究が展開されています。
D-アミノ酸のうち、D-メチオニン、D-フェニルアラニンは抗生物質等の医薬原体製造の原料として使用されています。
D-アミノ酸は記憶、学習といった脳の高次機能への関係、統合失調症やアルツハイマー病との関連が報告されており、生理機能や疾病との関わりが注目されています。
今後も多くの医薬品開発にD-アミノ酸の応用が期待され、D-アミノアシラーゼによるD-アミノ酸合成が重要になると考えられています。
D-アミノ酸は記憶、学習といった脳の高次機能への関係、統合失調症やアルツハイマー病との関連が報告されており、生理機能や疾病との関わりが注目されています。
今後も多くの医薬品開発にD-アミノ酸の応用が期待され、D-アミノアシラーゼによるD-アミノ酸合成が重要になると考えられています。
D-アミノアシラーゼは、合成化学分野におけるD-アミノ酸光学分割生産に有用な酵素として開発されました。D-アミノアシラーゼは加水分解酵素として知られており、N-アシル(D,L)アミノ酸に作用させるとD-アミノ酸を選択的に合成することが可能です。
D-アミノアシラーゼは、D-アミノ酸にのみ特異的に反応し、L-アミノ酸には反応しないことから、優れた立体選択性を示します。
D-アミノアシラーゼは、D-アミノ酸にのみ特異的に反応し、L-アミノ酸には反応しないことから、優れた立体選択性を示します。
αアミラーゼ
a
アミラーゼは1833 年に、麦芽からデンプンを分解する成分として発見されましたが、その後の研究で、アミラーゼには作用の異なる複数種の酵素が存在することが分かりました。1924 年にクーン(R.Kuhn) は、膵臓の抽出液のデンプンから、糊精化力の強いアミラーゼを発見し、αアミラーゼと命名しました。
広範囲で利用されている酵素で、主な用途として水飴やブドウ糖製造における液化工程、酵素分解デキストリンの製造、ハイマルトースシロップの製造およびパンの製造などがあります。
数多くのαアミラーゼが微生物・動物・植物から発見されており、特にBacillus 属のαアミラーゼは耐熱性が高く、デンプン糖化工業に利用されています。
1980年代に日本酒製造の新方法として開発された「液化仕込」法は、蒸米を調製せずに撹拌機のついた装置に水と白米を入れて吸水させ、耐熱性のαアミラーゼを添加し酵素の最適温度(70-80℃)まで加温することにより、白米のα化とデンプンの液化を同時に行うものです。伝統的な日本酒製造工程では原料として固体状の蒸米を用いますが、「液化仕込」では流動性に優れた液化米を用いるため、撹拌による均一化が容易となります。したがって、正確な温度制御による発酵が可能になり、良質な酒質設計が可能となりました。
数多くのαアミラーゼが微生物・動物・植物から発見されており、特にBacillus 属のαアミラーゼは耐熱性が高く、デンプン糖化工業に利用されています。
1980年代に日本酒製造の新方法として開発された「液化仕込」法は、蒸米を調製せずに撹拌機のついた装置に水と白米を入れて吸水させ、耐熱性のαアミラーゼを添加し酵素の最適温度(70-80℃)まで加温することにより、白米のα化とデンプンの液化を同時に行うものです。伝統的な日本酒製造工程では原料として固体状の蒸米を用いますが、「液化仕込」では流動性に優れた液化米を用いるため、撹拌による均一化が容易となります。したがって、正確な温度制御による発酵が可能になり、良質な酒質設計が可能となりました。
ブドウ糖が鎖状に連なった物質であるデンプンやグリコーゲンなどの鎖の内部にある、α-1,4グリコシド結合をランダムに切断するエンド型アミラーゼをαアミラーゼ(別名:液化酵素)と呼びます。αアミラーゼはデンプンなどを加水分解してオリゴ糖やデキストリンを生成します。
βアミラーゼ
h
アミラーゼは1833 年に、麦芽からデンプンを分解する成分として発見されましたが、その後の研究で、アミラーゼには作用の異なる複数種の酵素が存在することが分かりました。1924 年にクーン(R.Kuhn) は、麦芽から糖化力の強いアミラーゼを発見し、βアミラーゼと命名しました。
サツマイモ、オオムギ、コムギ、 ダイズなどから見出され、 高等植物に広く分布する酵素として知られています。産業的に有用な微生物由来の酵素が発見されたのは、1970 年代に入ってからです。
ブドウ糖が鎖状に連なった物質であるデンプンの非還元性末端から、マルトース単位でα-1,4グリコシド結合を分解するエキソ型アミラーゼがβアミラーゼです。デンプンはα-1,4-グルコシド結合で直鎖状に重合したアミロースと、α-1,6-グルコシド結合によって分岐したアミロペクチンからなり、本酵素はアミロースをマルトースにほぼ100%分解します。ただし、デンプンのα-1,6結合の手前では反応が止まり、巨大なデキストリン分子が生成します。デンプンからマルトースを製造する場合、βアミラーゼ単独ではマルトース含量は40%前後にとどまりますが、αアミラーゼでデンプンを分解した後に本酵素を作用させると、マルトース含量は55%程度に上昇します。
アシラーゼ
a
1952年、米国国立がん研究所のバーンバウム(Birnbaum) 等によるブタ腎臓抽出液にアシラーゼ活性の確認の報告があります。
工業用途としてLアミノ酸製造が広く知られています。本酵素により化学合成されたN-アシル-DL-アミノ酸を加水分解すると、分解物としてLアミノ酸だけが生成されます。本方法は、他の方法に比べて光学純度の高いLアミノ酸が得られる優れた製造法です。この方法において、本酵素を固定化して使用する検討が行われ(1969年)、それは世界初の固定化酵素バイオリアクターの工業化例としても知られています。
アシラーゼはアミノアシラーゼ、N-acyl-L-amino-acid amidohydrolaseとも呼ばれ、N-アセチル化アミノ酸の遊離アミノ酸と酢酸への加水分解を触媒します。本酵素は、細胞内のタンパク質分解で生成する、アセチル化されたアミノ酸の分解を担っています。このような作用から、腎臓移植後の長期転帰のバイオマーカー、腎細胞および肝細胞のがん抑制への関与の可能性が示唆されています。
本酵素は動物、植物、微生物に広く分布しており、今日までに様々な生物に由来するものが精製され、酵素化学的性質が明らかにされています。
本酵素は動物、植物、微生物に広く分布しており、今日までに様々な生物に由来するものが精製され、酵素化学的性質が明らかにされています。
エステラーゼ
a
エステラーゼの中でもリパーゼの発見は、1844年のフランスの生理学者ベルナール(C.Bernard)による発見にまで遡ることができます。この発見がエステラーゼの最初の発見と考えられています。
本酵素は、化学物質を廃棄する際の分解用途でも注目されています。多くの新規エステル化合物が開発され、一部はペットボトルのようなポリマー製品として使用されていますが、このようなポリマー物質は自然分解が難しいため、分解を促進するエステラーゼの開発が進められています。エステラーゼは新規の化学物質の製造や廃棄の為の分解に、これからも用途開発が進められていくと考えられています。
エステラーゼはエステルを加水分解する酵素の総称です。広く動植物の組織中に存在し、エステルを酸とアルコールに分解します。(※エステラーゼの中で、グリセロールと脂肪酸のエステルである油脂を加水分解するものがリパーゼです)また、プロテアーゼによるペプチド(アミド)結合の分解反応と、エステル結合の加水分解反応が非常に類似しているため、エステラーゼ活性をもつプロテアーゼも数多く存在します。
本酵素は、光学活性有機化合物を製造する合成化学用途で注目される加水分解酵素です。酵素を用いない化学法と比べると、本酵素の持つ高い基質特異性により、副生成物が少ないため、より優れた方法として期待が高まっています。
本酵素は、光学活性有機化合物を製造する合成化学用途で注目される加水分解酵素です。酵素を用いない化学法と比べると、本酵素の持つ高い基質特異性により、副生成物が少ないため、より優れた方法として期待が高まっています。
βガラクトシダーゼ
h
βガラクトシダーゼは、1889年にオランダのデルフト大学のバイエリンク(M.W.Beijerinck)によって、酵母由来の本酵素が発酵微生物を用いて発見されたとする報告がありますが、後にこの結果は否定され、1894年にフィッシャー(E. Fischer)によりβガラクトシダーゼが再発見されています。
本酵素は食品産業では重要な酵素の一つです。本酵素で乳中や乳製品中のラクトースを分解することで、砂糖無添加での甘味増強、乳糖の再結晶化防止によるアイスクリームの食感低下防止が可能になります。また、本酵素の転移反応を活かして、乳糖からのガラクトオリゴ糖(GOS)製造にも使用されています。GOSは消化管内でビフィズス菌を増加させ、整腸作用を示す機能性のオリゴ糖で、日本では規格基準型特定保健用食品としての認証が与えられています。GOSは熱や酸に強く、さまざまな食品に広く利用されています。
βガラクトシダーゼは、ガラクトースとグルコースがβ1,4結合した乳糖(ラクトース)を、ガラクトースとグルコースに分解する酵素です。ラクトースを分解するためラクターゼとも呼ばれます。
本酵素は自然界に広く分布しており、植物、動物、微生物など多くの異なった起源から単離されています。
本酵素は自然界に広く分布しており、植物、動物、微生物など多くの異なった起源から単離されています。
キシラナーゼ
k
米国のウィスラー(R.Whistler)等が、1955年にキシラナーゼに関して最初と思われる報告を発表(J. Am. Chem. Soc. 77, 1241–1243)しました。
本酵素は、パン生地の作業性改善、コーヒーや植物油の抽出改善のほか、サイレージや穀物の消化性向上にも活用されています。工業分野では製紙産業で木材パルプの無塩素漂白にも使用されています。
近年話題となっているバイオエタノールの製造では、セルラーゼと並んでキシラナーゼの改良が注目されており、新規の酵素探索や蛋白質工学による改良研究が進められています。
近年話題となっているバイオエタノールの製造では、セルラーゼと並んでキシラナーゼの改良が注目されており、新規の酵素探索や蛋白質工学による改良研究が進められています。
キシラナーゼは、キシランをキシロースに分解する酵素です。キシランとはD-キシロースがβ-1,4結合した高分子物質で、リグニン、セルロースとともに細胞壁を構成するヘミセルロースを構成します。したがって、キシラナーゼは細胞壁の分解を促進します。本酵素は植物を栄養源として繁殖する微生物に見出されますが、哺乳類等の動物には存在しません。
キチナーゼ
k
1911年、フランスの植物学者ノエルベルナード(Noël Bernard)が、蘭の球根から抽出した抗真菌活性成分中に存在する酵素について報告しました。本報告が世界初のキチナーゼに関する報告です。
キチンはカビ・キノコなどの細胞壁を構成する成分です。したがって、食物作物の生育障害をもたらす昆虫やカビの生育を抑制する酵素農薬としての可能性が検討されています。実際に、土中にはキチナーゼを分泌する放線菌がおり、フザリウム菌など植物病原菌の細胞壁を溶かし、その増殖を防ぎます。また、この放線菌を増殖させるためにカニガラやキトサンを施用する方法が知られており、ヒトでは本酵素は生体防御に関係していると考えられています。
キトサンを本酵素で分解して生成されるグルコサミンは健康食品の素材として期待されています。グルコサミンを補給することで、軟骨の磨り減りを抑え、関節の動きを滑らかにすることでの関節痛の改善効果が予想され、実証研究が進められています。
キトサンを本酵素で分解して生成されるグルコサミンは健康食品の素材として期待されています。グルコサミンを補給することで、軟骨の磨り減りを抑え、関節の動きを滑らかにすることでの関節痛の改善効果が予想され、実証研究が進められています。
キチナーゼは、キチンのグリコシド結合を分解する加水分解酵素です。キチンはN-アセチルグルコサミンが鎖状に結合したもので、エビ・カニなどの甲殻類や昆虫類などの外骨格(殻)の主成分です。本酵素は、昆虫、甲殻類および真菌類の他、微生物、植物、動物からも発見されています。
グリコシダーゼ
k
1837年にドイツの化学者リービヒ(J.Liebig)が発見した、アーモンドの種子から得られたエムルシン(emulsin)が最初の発見と考えられています。その後の研究により、βグルコシダーゼの一種であるβガラクトシダーゼが主要成分であることが判明しました。
植物の葉、花、果実などの組織では、揮発性の香気成分がグリコシド結合で糖と結合することで、香気成分を揮発しない配糖体にして蓄えています。それらの配糖体は、熟成や発酵の際に、本酵素により分解され、香気成分が遊離されます。ウーロン茶や紅茶などの発酵茶の特徴ある香気は、配糖体が本酵素で分解され香気成分が遊離され生み出されたものです。
グリコシダーゼとは、グリコシド結合を加水分解する酵素の総称です。本酵素は全ての生物に存在しており、細胞内に存在する酵素、細胞外に存在する酵素の両方が知られています。自然界の炭水化物はグリコシド結合により糖分子同士、あるいは糖分子と別の有機化合物分子が結合した状態で存在しています。したがって、本酵素は一般的に栄養の吸収に関係していると考えられています。
グルカナーゼ
k
酵素の分類上、グルカナーゼにはアミラーゼやセルラーゼも含まれており、その発見はこれらの酵素の発見(アミラーゼ1833 年、セルラーゼ1911年)に遡ることになります。
βグルカンは、細菌、真菌、酵母、オート麦、大麦といった穀物の細胞壁を構成する天然成分として広く知られています。βグルカンを分解するβグルカナーゼは糸状菌や酵母、細菌の細胞壁成分を溶解することから、植物の疾病における予防や治療への応用が期待されています。工業利用では酵母エキス製造やビール製造工程の濾過効率の向上への使用、飼料消化促進剤としての使用が知られています。
グルコースで構成される多糖であるグルカンを加水分解し、グルコオリゴ糖またはグルコースを生成する酵素がグルカナーゼです。
グルカンはαグルカンとβグルカンに分類されます。代表的なαグルカンとしてはプルランが知られており、これを分解するのがプルラナーゼと呼ばれるグルカナーゼです。
グルカンはαグルカンとβグルカンに分類されます。代表的なαグルカンとしてはプルランが知られており、これを分解するのがプルラナーゼと呼ばれるグルカナーゼです。
グルコアミラーゼ
k
本酵素は1949年に京都大学食糧科学研究所の北原覚雄により発見されました。
グルコアミラーゼは、デンプンから直接グルコースを生成するため、工業的にはグルコースの製造、醸造等に利用されている有用な酵素です。クモノスカビ(Rhizopus) 由来のグルコアミラーゼはデンプンを蒸煮しなくても効率よく作用するため、無蒸煮発酵法などにも利用されています。
グルコアミラーゼは日本主導で研究開発が進められてきた酵素の一つです。その歴史は西洋における麦芽による糖化と、日本を含む東洋の麹による糖化機構を対比させたところから出発したとされています。本酵素を中心に世界に誇る日本の糖質のバイオテクノロジーが発展し、αアミラーゼと本酵素を利用したデンプン糖化によるブドウ糖工業的生産法が開発されました(1959 年)。
グルコアミラーゼは日本主導で研究開発が進められてきた酵素の一つです。その歴史は西洋における麦芽による糖化と、日本を含む東洋の麹による糖化機構を対比させたところから出発したとされています。本酵素を中心に世界に誇る日本の糖質のバイオテクノロジーが発展し、αアミラーゼと本酵素を利用したデンプン糖化によるブドウ糖工業的生産法が開発されました(1959 年)。
アミラーゼの一種であり、デンプンの非還元性末端からグルコース単位でα-1,4グリコシド結合を逐次分解する酵素です。アミロペクチンに含まれるα-1,6結合も分解するため、中にはデンプンの100%近くをグルコースに分解するものもあります。本酵素は糸状菌に多く見出されますが、植物、動物界には知られていません。
βグルコシダーゼ
h
1837年にドイツの化学者リービヒ(J.Liebig)によりアーモンド種子から発見されたのが最初の報告と考えられています。
小腸粘膜に存在するβグルコシダーゼは、食品中の植物由来の配糖体を分解すると考えられています。大豆に含まれるイソフラボンには健康促進機能が期待されていますが、イソフラボンは大豆加工食品ではβグルコシド結合によりブドウ糖と結合した配糖体として存在しています。小腸粘膜の本酵素により、大豆食品中のイソフラボンが遊離され吸収されると考えられています。
また、ヒトではβグルコシダーゼの先天性欠損症としてゴーシェ病という遺伝病が知られています。ゴーシェ病ではグルコセレブシダーゼというβグルコシダーゼの一種がないため発症します。その治療の為、グルコセレブシダーゼを補充する治療法が開発されています。
また、ヒトではβグルコシダーゼの先天性欠損症としてゴーシェ病という遺伝病が知られています。ゴーシェ病ではグルコセレブシダーゼというβグルコシダーゼの一種がないため発症します。その治療の為、グルコセレブシダーゼを補充する治療法が開発されています。
βグルコシダーゼは糖のβ-グリコシド結合を加水分解する酵素です。微生物、高等植物、動物の肝臓・腎臓・小腸粘膜、カタツムリの消化液などに広く存在しますが、基質特異性は起源によって異なります。
グルコースオキシダーゼ
k
グルコースオキシダーゼはAspergillus niger、Penicillium glaucumからコペンハーゲン大学の植物学者デトレフ・ミュラー(Detlev Müller)によって当初抗菌活性成分として発見されました。その後の研究により、抗菌活性はブドウ糖の存在下でのみ発揮されることを見出し、本成分中にグルコースオキシダーゼを明らかとし、1928年に報告しました。ブドウ糖を酸素存在下でグルコン酸に変換する酵素であることは1949年に報告されています
本酵素は、食品や診断薬などの分野で広く用いられています。食品用途では、酸素の除去及びグルコースの除去等の目的で使用されています。
診断用途ではグルコースに対する特異性が高い点を利用して、血糖値の定量に使用されています。中でも、糖尿病患者の血糖自己測定のために、絶縁性の基板上に電極、酵素反応層を形成した電気化学的バイオセンサーを用いた、簡易型の自己血糖測定器が広く用いられています。
診断用途ではグルコースに対する特異性が高い点を利用して、血糖値の定量に使用されています。中でも、糖尿病患者の血糖自己測定のために、絶縁性の基板上に電極、酵素反応層を形成した電気化学的バイオセンサーを用いた、簡易型の自己血糖測定器が広く用いられています。
グルコースオキシダーゼは、ブドウ糖を酸化し、グルコノ−δ−ラクトンと過酸化水素に変換する酵素です。グルコースオキシダーゼは様々な微生物から見出されています。微生物以外ではミツバチ咽頭腺由来の本酵素が報告されており、ハチミツ中に存在し天然の防腐剤として作用しています。グルコースオキシダーゼがブドウ糖の存在するハチミツの表面で空気中の酸素を過酸化水素に還元し、抗菌剤として作用するためです。
グルコースデヒドロゲナーゼ
k
微生物(Aspergillus)由来グルコースデヒドロゲナーゼの発見は1937年に遡ることができます。日本人研究者の小倉(Ogura Y)等により報告されています。
工業用途としては、診断薬分野で血糖値センサーへ適用されているグルコースオキシダーゼの代替用途が主となります。グルコースオキシシダーゼは、 グルコースに対する基質特異性が高いという長所があるものの、溶存酸素の影響を受け、測定結果に影響があるという問題を有しています。グ ルコースデヒドロゲナーゼは、グルコース酸化時に溶存酸素と電子授受を行わないことから、血糖値センサーとして優れた性質を持ちます。半面、グルコースに対する特異性がグルコースオキシダーゼと比べて劣っており、新たな酵素の開発が進められています。
グルコースデヒドロゲナーゼは電子供与体を介してブドウ糖に作用し、ブドウ糖をグルコノ−δ−ラクトンに変換する酵素です。グルコースオキシダーゼとは違って過酸化水素は生成しません。
この酵素は哺乳類(ウシ・ヒツジ・イヌ・ネコなど)の肝臓に見出されており、栄養センサー及び生存促進因子として機能していると推察されています。微生物にも本酵素が見出されており、工業用途には微生物由来の酵素が使用されています。
この酵素は哺乳類(ウシ・ヒツジ・イヌ・ネコなど)の肝臓に見出されており、栄養センサー及び生存促進因子として機能していると推察されています。微生物にも本酵素が見出されており、工業用途には微生物由来の酵素が使用されています。
酵母エキス用酵素
k
酵母エキスの調味料としての用途開発は1900年代初頭から開始され、1950年代に市場投入されました。当初は酵母に内在する酵素による自己消化法が用いられていましたが、徐々に製品を差別化するため、呈味成分を増強するヌクレアーゼやデアミナーゼなどの酵素が使用されるようになりました。
ヌクレアーゼとデアミナーゼで処理することで、酵母の核酸を5’-イノシン酸(鰹節のうま味)や5’-グアニル酸(椎茸のうま味)に変換することができ、うま味を増強できます。
このようにして製造された酵母エキスは、食品加工業界では、化学調味料よりも安価で、特徴ある味が出しやすいため、麺つゆ、ラーメンスープ、インスタント食品など多くの加工食品に使われています。
また、栄養補助食品として販売されている酵母エキスもあります。
このようにして製造された酵母エキスは、食品加工業界では、化学調味料よりも安価で、特徴ある味が出しやすいため、麺つゆ、ラーメンスープ、インスタント食品など多くの加工食品に使われています。
また、栄養補助食品として販売されている酵母エキスもあります。
ビール酵母やパン酵母などから酵母エキスを製造する際、呈味性核酸である5‘-イノシン酸および5’-グアニル酸の含量を増強させるために、ヌクレアーゼとデアミナーゼを使用することがありますビール酵母やパン酵母などから酵母エキスを製造する際、呈味性核酸である5‘-イノシン酸および5’-グアニル酸の含量を増強させるために、ヌクレアーゼとデアミナーゼを使用することがあります。